肌(顔)のこと
アピアランス(外見)の変化の一つである肌(顔)のトラブルについて、気になることの対処法を解説します。
社会復帰や外見の変化についての
「専門家インタビュー」はこちらからお読みいただけます。
今日からでもできること
今、持っているものなどを活用して、今日からすぐにでもできるシンプルなものをご紹介します。
男性もしっかりと保湿をして、メイクも取り入れてみよう
職場や地域社会、学校などで接する人たちから、元気がないと思われるのは、できれば避けたいものです。肌つやがよく見えるようにするには、化粧水や乳液などで肌にうるおいを与えましょう。性別を問わず、保湿はスキンケアの基本です。また、色つきの下地などで、目のまわりのくすみを取れば、顔の印象は大きく変わるでしょう。リップやチークは、血色よく見える色を選ぶのがおすすめです。男性も、ラメの入っていないチークを使うと元気に見えます。奥様やパートナーから借りてもよいでしょう。女性は気分が沈んだときなどにフルメイクをすると、明るく元気になれるでしょう。
元気に見えるメイク(お肌)のポイント
・メイク前に保湿を
・色つき下地などで目のまわりのくすみを取ろう
・リップやチークは血色よく見える色を使おう
メイクの確認をするときの鏡の位置
メイクを確認するときに、肌トラブルがあると気になり、鏡に近づいて見たくなりますが、日常生活でそれほど近い位置から顔を見られることはなく、本人が思っているほどまわりの人は気にしません。社会的な対人距離といわれる1.5~3メートルほど離れた位置に鏡を置き、どのように見えるのか、客観的に確認するようにしましょう。
患者さん体験談
くすんでしまった肌を明るく見せようと、肌の色に合わないファンデーションを使い、白浮きして顔色を悪くしていました。チークを使っていなかったことも、顔色を悪く見せていた原因です。
少しの工夫でできること
日常にちょっとした工夫をプラスすることで、快適な生活ができるようなものを集めてみました。
ファンデーション選び
全体の色が変わった場合は、まずはファンデーションの色のトーンを下げてみてはいかがでしょう。くすみやクマ、シミなどがどうしても気になるというときには、市販されているカバーメイク用のファンデーションを使ってみるのも一つの手です。ご自分の肌の色に合うものを選んで塗るだけなので、メイクのテクニックは必要ありません。汗をかいても落ちにくく、衣服に色移りしにくいウォータープルーフタイプなど、さまざまな機能を持った製品がそろっています。女性だけでなく男性も使用できる製品もあるので、試してみるとよいでしょう。
メイクアップ教室
メイクを人から教わりたいという人は、メイクアップ教室に参加してみてもいいでしょう。治療による肌の悩みを持つ人に向けて、さまざまな団体や自治体が、メイクアップ教室を開催しています。プロの力を借りて化粧法を習ったり、メイクの提案をしてもらったりすることで、自分に合うメイク方法を見つけられることが期待できます。「メイク教室」「メイクレッスン」などのキーワードで検索したり、病院や自治体に聞いたりして、各地域で探してみるといいですよ。
参考:国立がん研究センター研究開発費 がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班 編:がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版(金原出版)
野澤桂子,藤間勝子 編:臨床で活かす がん患者のアピアランスケア(南山堂)
プラス インフォメーション
もっと詳しく、より専門的なことをお知りになりたい方のために、
アピアランスの専門家や専門メーカーの方々からの声をご紹介いたします。
山崎 多賀子さん
美容ジャーナリスト。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。NPO法人キャンサーリボンズ理事。女性の乳房の健康を応援する「マンマチアー委員会」を仲間と設立。
肌(顔)の悩みに対して、どのような工夫、コツがあるでしょうか。
「肌の色つやがいい」というのは、健康的であることを表す言葉で、顔の中で一番面積が広い肌は健康感にもっとも関わります。肌のくすみやクマ、赤み、肌荒れ、シミなどが気になるとき、「肌色」と「肌つや」の二点をファンデーション類や保湿で簡単に解決することができます。実は「元気に見える」メイクの最大のポイントは、メイク前の油分と水分による保湿です。潤いのある柔らかな肌にファンデーション類は均一にピタッと密着するので、重ね塗りをしても厚塗りに見えず、つやも出て元気に見えるのです。
肌(顔)について、がん経験者の方から多く寄せられるご質問がありましたら、そのご回答とともにお教えください。
シミが濃くなると聞きました。上手にカバーするコツはありますか。
必ずではありませんが抗がん剤治療中、シミが増えたり濃くなったり、両頬に肝斑という薄く広範囲なシミが出ることがあります。これらは治療が終わればまた薄くなりますが、やはり目立つので気になりますね。部分的なシミはファンデーションを塗った後、カバー力の高いコンシーラーを部分的に重ねて色をカバーし、その上からパウダーファンデーションで押さえることで目立たなくなります。コンシーラーの色は、肌色と同じかやや暗め、またはオレンジベージュ系の色がおすすめです。ドラッグストアのテスターなどで、シミが自然に消える色を探してみてはどうでしょう。他人は人のシミや肝斑をそんなに気にしません。完全に色を消すのではなく、目立たなくするくらいの感覚でカバーしましょう。
顔全体のくすみや赤みが気になります。ファンデーションを厚塗りするしか方法はありませんか。
顔全体のくすみや赤みをカバーする方法として、コントロールカラーなどと呼ばれている、肌色補正効果のある色付き化粧下地を使うことが一つの手です。くすみはオレンジ系、赤みはグリーン系と、肌色の悩みに応じた色の下地があり、ドラッグストアなどでも簡単に手に入ります。色付きの下地で肌色を補正したあと、いつものファンデーションを塗ると、厚塗りにならずにくすみや赤みも目立たなくなります。くすみを明るくしようと白っぽいファンデーションを塗ると、くすみと白が合わさりグレーに近づき、より顔色が悪くなることもあるので注意しましょう。
疲れて見えると言われます。元気に見える化粧のポイントはありますか。
顔の中でもっとも元気な印象を決定づけるパーツは、目元です。目元のまわりがくすんでいると疲れて見え、どんなにアイメイクをしても疲れた印象はぬぐえません。そこで保湿をたっぷりした後、目のまわりだけはカバー力の高いコンシーラーをまつ毛キワまで薄く丁寧にのばして、一度くすみを目立たなくします。目のまわり以外は普段のファンデーションを使い、目のまわりは薄づきのパウダーファンデーションかおしろいで軽く押さえて崩れを防ぎます。とくに目元のくすみが強い場合、コンシーラーはオレンジベージュ系がおすすめです。目のクマ専用のコンシーラーもあります。目元を明るくするだけで顔全体の印象はがらりと変わりますよ。
また、血色を与えるほお紅を入れることも元気に見えるポイントです。
男性がメイクしたとわからずメイクをするコツがありましたら教えてください。
男性も女性と同じで、肌の色つやが重要ですから、保湿は大切です。ただ化粧習慣のない男性が顔全体にファンデーションを塗ることに、抵抗がある人も多いでしょう。実際に男性の肌は女性に比べて硬いため、ファンデーションがなじみにくい傾向があります。そこで部分使いをおすすめします。健康感は目のまわりの印象で大きく左右されるため、目の下にのみカバー力の高いコンシーラーを薄くのばしてくすみやクマを目立たなくします。日焼けした男性の肌色にも合うコンシーラーも売られています。さらに笑ったときにポコンと盛り上がる正面の筋肉の場所にのみ、血色を感じさせるほお紅をうっすら入れ、リップクリームで唇に適度なつやを与えます。
当サイト「Cライフプラス」を閲覧されるがん経験者の方へ、メッセージがあればお願いいたします。
くすみやクマ、シミ、肌質の変化など、治療中に起こる肌色の変化の多くは、実は加齢でも起こることです。ですから、スキンケアもファンデーション類も、肌に合わないと感じなければ、一般の化粧品で十分に対応が可能で、さまざまな肌色の悩みに対応する便利な化粧品がドラッグストアをはじめたくさん売られています。手持ちのものがあれば買いなおす必要はありません。そして女性も男性も肌をいい状態に保つポイントは、日中の肌を乾燥させないこと。紫外線や乾燥、大気汚染、刺激など、肌のダメージ要因は日中に集中しているので、足りない水分と油分を朝にたっぷり与えてダメージを防ぐことが大切です。また吹き出物がたくさんできるなどした場合は、迷わず皮膚科に相談してください。
化粧品を取り扱う専門メーカーの方々に、よくある質問をお聞きしました。(アイウエオ順)
・株式会社資生堂様
・マーシュ・フィールド株式会社様
株式会社資生堂様
肌(顔)の悩みに対して、どのような工夫、コツがあるでしょうか。
ファンデーションの化粧のりや持ちをよくするために、スキンケアを必ず行い、ファンデーションの使用順序を守りましょう。
肌(顔)について、がん経験者の方から多く寄せられるご質問がありましたら、そのご回答とともにお教えください。
部分用ファンデーションの使用順序を教えてください。
パウダータイプのファンデーションをお使いの際は、部分用ファンデーションをなじませた後に重ねてください。クリーム、リキッド、エマルジョンタイプのファンデーションをお使いの場合は、部分用ファンデーションは後から重ねてください。
気になるところをメイクで上手にカバーする(隠す)コツはありますか。
いつもご使用のファンデーションにあわせて、部分用やカバー専用のファンデーションを使用してみましょう。
シミ・クマ・くすみなどカバーしたい部分に使用することで、自然にカバーできます。
気になるところにつけ、指で軽くたたくようにしながらなじませましょう。
マーシュ・フィールド株式会社様
肌(顔)の悩みに対して、どのような工夫、コツがあるでしょうか。
治療中のお肌のお悩みについては情報がまだまだ少ないためご自身で試行錯誤された末、長期間お悩みの方も多くいらっしゃいます。
メイクをしてもなかなか隠れないお悩みについて、カバー用化粧品を使用することで隠すことができる場合もございます。「カバー用化粧品」と聞くとハードルが高いイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、一般的なシミやクマのカバーなどを含め、どなたにでもご使用いただける化粧品です。今まで使用していた化粧品にアイテムをプラスすることでお悩みのカバーができることもありますので、気になる方はお気軽にご相談ください。
肌(顔)について、がん経験者の方から多く寄せられるご質問がありましたら、そのご回答とともにお教えください。
抗がん剤治療によって生じた顔のくすみやシミ、色素沈着をカバーする方法を教えてください。
くすみやシミ、色素沈着のある箇所には、下地にオレンジ色のファンデーションをおすすめしております。
肌色のファンデーションを重ね塗りするだけではカバーできないお悩みの場合、肌色のファンデーションを塗布する前にオレンジ色のファンデーションを少量塗布することで、お悩みをカバーしやすくします。オレンジはお顔に血色感をプラスし、お顔全体の印象を健康的に明るく見せる効果もございます。
メイクがすぐに崩れてしまいます。対処法があれば教えてください。
崩れを防止するためには、ウォータープルーフの化粧品を使用していただくことをおすすめしております。また、ファンデーションを塗布した後、フェイスパウダーを多めに塗布していただくとさらに崩れにくくなります。
男性や化粧に慣れていない人でも使うことができますか?
ご相談いただく患者様の中には、男性も多くいらっしゃいます。また、「今まで一度もお化粧をしたことがない」という女性の方も、数回練習されると上手にカバーされているケースが多いです。
カバー用化粧品と一般的なファンデーションの違いを教えてください。
カバー用化粧品は元々、あざや傷跡などメイクで隠しづらい肌色のお悩みをカバーするために開発された化粧品です。さまざまな肌色のお悩みをカバーするため、隠ぺい力や耐久性などが重視されています。